1年生後半になって、ついに実習が始まった。
私は、すごく楽しみだった。
学校ではクラスの子たちと相互実習を繰り返して、器具の持ち方やスケーリングの手技も少しずつ形になってきてた。
それが、いよいよ現場で本物の患者さん相手にどう活かされるのか。
ワクワクしないはずがなかった。
もちろん実習先によっては「見学だけ」って話も聞いてたから、
「何もやらせてもらえなかったらつまんないな〜」って思ってた部分もあるけど、
それでも私は、“現場のリアル”が見られるのが楽しみで仕方なかった。
最初の実習先は、町の歯医者さん。
だけど分院もある法人で、先生も歯科衛生士も常勤で3〜4人。
40代以上のベテランの衛生士さんたちは本当に優しくて、毎日行くのが楽しかった。
別の学校の実習生も一緒にいたから、
いろんな人からアドバイスをもらえたり、一緒にランチしながら情報交換したり…
まるで社会に出たみたいな雰囲気が心地よかった。
でも、そんな実習生活にも「忘れられない瞬間」があった。
ある日、とにかく診療がめちゃくちゃ忙しかった。
誰も手が空いてなくて、でも時間はどんどん迫ってくる。
受付の人が私のところに来て言った。
「ねえ、歯周検査できない!?やってもらえない!?」
急にふられた初めての“本番”。
もちろん不安だったし、学校でやってたとはいえ、患者さんに実際に触れるのは全然違う。
でも他にやれる人がいない。
「もう、学校の相互練習だと思ってやるしかない!」
受付の人が横についてくれて、患者さんにも
「この子、まだ学生なんです。時間かかるかもしれないですけど、多めに見てあげてくださいね」って声かけてくれた。
患者さんも優しい人で、にこっと笑ってくれて。
私はもう、手汗びっしょりになりながら、ひとつひとつ確認して、時間をかけながらも歯周検査をやりきった。
実習を通して私は、いろんな経験をさせてもらった。
はじめは全然できなかったアシスタントも、
毎日繰り返していくうちに、少しずつ手順が身について、
“レベルアップ”していく感覚が楽しくなっていった。
座学だけでは理解しきれなかった知識が、
実際の患者さんを目の前にしたときに
「あ、これってこういうことだったんだ」って繋がっていく瞬間があって、
そのたびに、私の中に少しずつ自信が積み上がっていった。
でももちろん、つらいこともあった。
毎日書かなくちゃいけない実習日誌は、A4より大きいサイズで2枚。
最初はよかったけど、途中から正直ネタ切れ。笑
さらに、実習から帰ってきてからの家事。
ご飯を作って、子どもたちと話して、一緒に寝落ちなんてしょっちゅうだった。
楽しかった。
でも、やっぱり「学校とは違う疲れ方」だった。
それでも、最初の実習先が優しい人たちだったこと、
たくさん経験させてもらえたことに私はすごく救われた。
「私、歯科衛生士できるかもしれない」
そう思えたことで、もっと頑張ろうと思えたし、
いつか私も、実習生が来たときには
たくさん経験させてあげられるような人になりたい、って思えた。
次回は…
少しずつ現場にも慣れてきた2年生の体験を書いていこうと思います。
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